このことはアダルトゲームのみに限定されないが、パソコンゲーム全般は、その黎明期において動作環境であるパーソナルコンピュータが、ソフトウェアの開発環境をもパッケージ化された製品として市場に出たため、パソコンゲームの開発には家庭用ゲーム機よりもハードルが低く、極端な例では現在の同人ゲームと同程度の出資によって制作可能であった。このため、日本国内においてのアダルトゲーム発展の歴史は、パソコンゲーム発展の歴史と重なる部分が強い(→アダルトゲームの歴史)。
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この「開発環境の入手しやすさ」は、パソコン販売業者までもがアダルトゲームの開発と販売に参入していた黎明期より現代にいたるまで連綿と続いており、アダルトゲーム開発を主な業務とするソフトウェアメーカーにおいては、コンシューマーゲームのメーカーよりも広い裾野を形成しており、企業規模の面で同人ゲーム開発サークルとの境界が曖昧なところも見出される。
アダルトゲームの技術とその進歩においては、家庭向けのパーソナルコンピュータの性能が向上していく過程で、それに牽引される形で発達を見せており、この事情はやはり黎明期からあまり変わっていない。しかし共通化されたゲームエンジンの開発と導入などにもより、より「アダルトゲームを含むコンピュータゲームの開発のしやすさ」は向上しており、これは前述の同人ゲーム開発サークルとの境界の曖昧化を発生させていると見ることも可能である。
この中では、技術力のあるメーカーが独自に新しい映像技術を開発・導入したりする一方で、おたく文化の発達にもより作画担当者が輩出されている関係で、技術力に劣る中小のメーカーでも描画力に優れ人気のある作画担当者(作家)を擁して対抗しうるなどの、住み分けを行っている様子も見られる。
グラフィック
日本のアダルトゲームの最大の特徴を成しているのがグラフィックである。アダルトゲームが出始めた1980年代の8ビットパソコン時代の末期から16ビットパソコン全盛期では技術上の制約からプログラマー兼デザイナーの描くドット絵に留まっていた。しかし、1995年のWindows 95の登場により解像度と発色数が増加、以降技術進歩により2000年代には実写映像を動画で流す事も可能となっても、アダルトゲームは現在も線画を基にしたコンピュータグラフィックスで人物を表現するのが主流となっている。また、コンピュータゲームでも対戦格闘ゲームやロールプレイングゲームなどの他ジャンルでは立体感のある3Dを用いたり人物描写も比較的写実的になるのに対し、日本のアダルトゲームでは平面的な2Dで、顔も瞳が顔の大半を占めるほど大きい反面、鼻や口がしばしば簡略化ないし省略される、一般的にはマンガ絵・アニメ絵と呼ばれる独特なデザインで表現されている。そのデザインはしばしばエロさといった性的興奮より、ユーザー・愛好者以外からは幼い・かわいらしいといったイメージを持たれる物で、それらへの愛らしさは『萌え』という単語で表現され、萌えを喚起する絵ということで『萌え絵』とも呼ばれている。
グラフィックが女優による映像ではなく、絵による画像が主流のアダルトゲームにおいては、キャラクターに音声を入れる場合がある。その音声を担当するのは声優として演技の修養を積んだ人物が圧倒的に多い。
アダルトゲームへの音声の導入はCD-ROM・大容量ハードディスクというハードウェアの技術進歩があって初めて可能になった要素で、時期的には家庭用ゲーム機における導入とそれほど大差は無く、1990年代前半くらいから徐々に普及し始めた。
コンピュータゲーム業界全体では「第三次声優ブーム」のあおりを受けて高騰する声優のギャラを巡って1997年9月からCESAと日俳連の間で交渉の場がもたれたが、ランクをアニメのそれより高額なものにするよう要求し、さらにハード間移植の際の音声二次使用料を要求するなど、強気の日俳連の前に交渉は難航。仲裁に日本音声製作者連盟(音声連)が加わり、日俳連がかなり譲歩する形で1999年2月10日に合意、ゲームにもランク制が導入された(合意についての参考サイト)。ただし、アダルトゲーム制作会社の場合は、CESAには加盟していないためこの合意の適用外であり、ギャラは声優とその所属事務所との個別交渉で決まるため、ランク制の設定額より数倍は高額になると言われている。
導入初期は声優業界側の各種取り決めは試行錯誤で、担当声優は一切公開されないか、逆に普段使っている芸名のままで公開されることも珍しくは無かった。またアダルトの規制基準が媒体によってまちまちで、媒体ごとに声優を交代させる必要があり、1990年代中期の作品では1キャラあたり4、5人も声優がいるものも存在した。この流れも1999年の法改正(詳細別節)と、ハード間競争がソニーのプレイステーション・プレイステーション2が優勢になったことを受け、1キャラあたりアダルト表現まで請け負う声優と、非アダルトの関連作品を担う声優の2名に大別されるケースが多くなった。
声優名の表記についても日俳連とマネ協で取り決めを整備し、「アダルト作品出演については日俳連に登録している以外の芸名で出演することが望ましい」という通達を出したこともあり、現在では多くの声優がアダルト作品に声をあてる場合にはアダルト作品用の別の芸名(風俗業界になぞらえて源氏名とも呼ばれている)を使用している(または、声優名を非公開とするか)。別の芸名を使う場合、一貫して特定のアダルト用の別の芸名を使う者、作品ごとに複数のアダルト用の別の芸名を使い分ける者など、人によってさまざまである。
現在アダルトゲームではアトリエピーチやイエローテイル(この2社を指してエロゲー界の「桃色黄色」という通称がある)といったプロダクション会社が制作会社に替わって大まかな選考・スケジュール調整を各声優事務所や声優と行う形態が主流で、大抵事務所所属者はグロス単位でオファーが来るケースが多い。起用するゲーム会社も、アダルトゲームに声をあてることができて、かつ能力・条件の合う声優の絶対数がまだまだ少ないのと、キャラクターの性格設定がある程度パターン化されたことも手伝って一部の声優にオファーが殺到する傾向にあり、北都南や一色ヒカルといった人気声優には年間50本以上、中堅声優でも30本前後はオファーが舞い込む。その結果、年間スケジュールの大半がアダルトゲーム関連で埋まってしまう声優も少なくない。
加えてアダルトゲームの場合ノベル形式のアドベンチャーゲームが主流のため、台詞の量がアニメに比して多い。台本はおよそタウンページ2冊前後、メインヒロインではその1.5〜2倍に達する分量があり(ただし、アニメ用と異なり、ゲームスタッフがプリンターとコピー機を駆使して作った片面印刷の簡易製本のため、単純には比較できないが)、これを一人スタジオに籠って収録(掛け合いによる方式、いわゆるアフレコは行われない)している。また、大半のアニメ作品が1話あたり30分で分割して収録できるのに対して、ゲームの場合スタジオレンタル料との兼ね合いから短期で集中して収録する(1日あたりの拘束時間が長い)ため、ゲームの仕事が入ると他の仕事は取りづらくなってしまう。そのため、ゲームの収録にアニメで成功している声優は呼びづらいという事情もある。
こうした事情の中、歌手栗林みな実が『君が望む永遠』において主題歌の歌唱のみならず、メインヒロインの声優を兼ね、しかもそのことをキャラクターのコスプレ姿で公言したことで業界に一石を投じることになり、さらに榊原ゆい、YURIAといった先に歌手として成功した人物も追随したため、「アダルトゲームによく声をあてる声優は影の存在」という流れは徐々に変わりつつある。もっとも、栗林・榊原の両名についてはマネジメント担当の事務所がアダルトゲームの制作会社と同一法人であり、そのためこの様なスタイルを取れたという一面もある。従来からの声優事務所に所属している声優についていえば、まだ大勢においては今の所は及び腰であるといえる。
アダルトゲームという性的な刺激を目的のひとつにした娯楽において「声=生身の人間を感じさせるもの」を演じる声優は、まるでAV女優や風俗嬢のようなイメージを与えてしまうこともある。上のような“日陰者”の流れを作ってきた一因にはこうした事情もあるだろうが、スタジオで声のお芝居をしているだけでこのような偏見を持たれてしまうのは、理不尽なことである。
歌と音楽(BGM)
現在では主題歌がつくこともごく一般的である。ただし、アダルトゲーム業界の開発チームでは小規模な開発チームが多く、また、アダルトゲームの音楽製作を請け負うプロやセミプロ(音楽同人系)のプロダクションが多数存在することから、音楽は外注を利用するスタイルが広く定着している。そのため、業界全体の傾向として音楽の内製率が低い事は特徴といえる。また、効果音も外注であったり、外部から効果音の音声データを購入してくる事はごく普通に見られる。
この業界に関わる音楽制作集団は数多く競合も激しいが、その中でも知名度で頭一つ抜けているのはI'veで、主題歌の編曲を手がけた『Kanon』(Key、1999)の爆発的な大ヒットで注目を集めた。I'veが音楽あるいは主題歌を手がけたアダルトゲームのパッケージにはI'veが音楽を担当したことを表すマークが付けられ、高い人気を誇り、その後、テレビアニメの劇伴にも広く進出している。また、2001年には音楽に定評のあるkeyのサウンドトラック等を専門に扱うKey Sounds Labelが発足した。他方でも、『吸血殲鬼ヴェドゴニア』(ニトロプラス、2001)では主題歌のボーカルに紅白歌合戦に出場したこともある小野正利を起用するなど、音楽や主題歌に力を入れる動きが顕著になった。また、インディーズで活動している者を中心に、アダルトゲームの主題歌を歌う女性歌手も少なくない。
また、1990年代の音楽シーンには『メタル氷河期』と呼ばれる時期があり、数多くのメタル系ミュージシャンが生活と音楽活動の維持の為にアニメ・テレビゲームなども含む多ジャンルの商業音楽に進出していったという、軽音楽業界の歴史的な経緯やその影響によるものか、アダルトゲームの主題歌を手掛ける音楽集団や音楽担当スタッフには、ジャパメタの経験者やフォロワーが多い。その為、ロックよりもかなりハードなドラムやギター、間奏のメロディカルなギターソロ、重低音重視のミキシングといったヘヴィメタル的な要素がふんだんに盛り込まれた楽曲が珍しくない事も、アダルトゲームの主題歌・BGMの特徴として挙げられる。その中でも特筆すべきはメーカーであるがニトロプラスで、作品によっては歌詞と曲だけ聞かされてもアダルトゲームの主題歌とは到底信じ難い様なハードなメタルテイストの曲を主題歌や挿入歌に据える事も珍しくなく、普段はアダルトゲームとは全く無縁なメタルファンの一部にまでその名を知られる事となった。他方、アダルトゲームの主題歌であるため、メーカーによってはハードでハイテンポな曲に、本項ではさすがに掲載がはばかられる様な物凄い歌詞を組み合わせたケースもあり、たとえメタル調のハードな曲であっても歌詞のバラエティという意味では、ラブソングやいわゆる「萌え」に属する歌詞がほとんど見られない本家ジャパメタとは比較にならない幅の広さを持っている。また、先述のニトロプラスのものを例外とすれば、メタルテイストの曲であってもほぼ全ての曲についてボーカル担当が女性である事は大きな特徴である。
しかし、これら技術の進歩や業界の変化によってもたらされた様々な要素、特に声優の起用や主題歌の製作に関する人件費を中心とする各種コストが、現在ではゲームソフトの価格に対する上昇圧力の一大要因になっている事も否定ができない。特にアダルトゲームファンの間でI'veが一大センセーションを巻き起こした2000年頃以降は、主題歌CDの初回特典としての添付がこの業界では販売促進策として至極当然のものとなっているが、これについては、多くのゲームに存在する初回特典の有無による価格差や、アダルトゲームでは初回限定版の発売後に通常版が最終的に発売されないケースが珍しくない事などを鑑みた場合、ゲームと主題歌CDの事実上の抱き合わせ販売の商法であるとして指摘する批判も少なくない。また、この様な事情から、初回特典付きゲームソフトを購入するしか正規に入手する方法が事実上無い、ある意味で「入手困難」と言える楽曲を多数持つ歌手もおり、楽曲の入手がままならない歌手のファンの立場からの批判も見られている。
アダルトゲームで使用・作成されたBGMは一般向けゲームソフトのゲームミュージック同様、広く地上波テレビ放送各局でも音楽素材として幅広く使用されている。